2010年5月10日月曜日

トラブル解決レポート 「ゴミ箱の中身を復活させよ」後編

前編のつづきです。


お客様のマンションへ到着し、直接クライアントにお会いしてみると、電話で話した女性は40代
の主婦の方でした。そのあとリビングまで案内していただき、問題のパソコン(NECのノートPC)を
拝見した。


作業を開始する前に、念のためもう一度作業内容が「消してしまったゴミ箱の中身を復活すること」
であることを再確認し、インフォームドコンセプトとして"データを取り出せる原理(ファイルシステムの
説明)"や今回使用するツールの紹介や作業時間などの内容をご説明し、了承を得てから作業
スタートしました。

粛々と専用ツール(File Scavenger※Free toolより速いので。)を仕掛け、スキャンする開始ボタン
を押しました。あとはそのソフトがディスク上のデータを捜索完了するのをひたすら待つのみです。

だがスキャンを開始しておかしなことに気づく。それはスキャンの処理ゲージがなかなか先へ
進まないのである。私見だがどうもかなりのデータ量が隠れた所にあるようだった。
一応、その時点で確認できた状況をお客様に報告したところ、以外な事実が判明しました。

実はそのノートパソコンはご主人専用のもで、ご本人はその日ゴルフに出掛け、高校生の
息子さんは部活の練習で学校へ行き、たまたま家には奥さまけがお留守番をしていたらしい。
そしてご主人のいない隙を見て、普段全然触らないパソコンを操作しているうちに好奇心が
エスカレートしていき、気づいたらご主人の浮気の有無をCHECKをしようとゴミ箱の中を
探していたそうです。

奥様の証言によるとゴミ箱の中には相当な数のデータがあったらしく(右側のスクロールバーが
下までもって行くのにかなり苦労したとおっしゃっていた)、一個一個その中身をcheckしている
うちに誤って[ゴミ箱を空にする]ボタンを押してしまったらしいです。

ここで奥さまは本気ともダジャレとも受け取れる次のような名言(迷言)を口にした。
「(ファイルが全部消えて)画面が真っ白になったけど、私の頭の中も真っ白になったわよ」

以上の真実が判明したところで、同時に奥様から次のミッションが与えられました。
1、ゴミ箱の中身を消す前の状態と全く同じにしてほしい。
(浮気checkしていたことがバレる可能性を排除したいので)

2、1の理由によりパソコン出張サポート業者が自宅に来たことも知られたくないので、
ご主人と息子さんが帰宅する前に作業を完了してほしい。

3、この話を聞いたのが午後3時頃で、息子さんが帰宅予定時刻は午後4時とのこと。
(タイムリミットは残り1時間!?)


ここまでの復旧度65%を終わらせるのに大凡2時間かかったので、単純に大体3x%/hの
処理速度と計算すると、仮に作業が順調にすすんだとしてもあと片付けの時間まで
考慮すると残りは50分もなく、かなりギリギリである。


こうなると技術もヘッタクリなく博打としか言いようがありません。


時間が経つにつれデータと取り出すことよりも、息子さんが戻ってくる前にミッションを完了
することのほうが重要になり、だんだんとこのような隠密作業をしている自分がまるで悪事
を働いてように思えてドキドキした。


タイムリミットまで35分をきったところで、復旧度70%ちょいまでいった。ここで自分は奥様へ
一つ提案をした。それは、膨大な量のゴミ箱の中身をご主人が細かく把握していたとは思えず、
復旧度80%でも無問題じゃないかと・・。

だがそれに対する返事は「もしもが怖いから必ず100%!」ということでした。
ご家族にバレてしまったらもともこうもないのに、奥さまかなり強気です。


しばらくして「仕方が無いわね」と言って、電話機の子機をまるで秘密兵器のよう手にた
奥さまは、息子さんに電話をかけ、
「友達と一緒ならお母さんがお金出すから駅前で何か食べてきなさい」
とほぼ命令に近い口調で息子さんに外食を勧めはじめた。

これが功を奏してタイムリミットが少し増えて、なんとか無事100%まで復旧することができた。
しかし、そのあと後片付けをして逃げるようにしてお客様の家をあとにしたのは言うまでもない。